銘 兼元
(大業物)

Katana
KANEMOTO
(O Wazamono)


美濃国 大永頃 約四百九十年前

刃長 二尺一寸八分七厘強
反り 六分
元幅 一寸二厘
先幅 六分九厘
棟重ね 二分
鎬重ね 二分二厘

金着二重ハバキ 白鞘付

黒蝋色塗鞘打刀拵入 附黒皺革製蟇肌
拵全長 三尺七分
柄長 七寸四分

昭和十九年八月十五日藤代義雄師覚書 (注1)
昭和十九年甲申葉月三日本阿弥光遜折紙 (注2)

昭和二十六年千葉県登録

特別保存刀剣鑑定書  

価格 二百五十万円(消費税込)

Mino province
Taiei era (A.D.1521-1527, late Muromachi period)
About 490 years ago

Hacho (Edge length) 66.3㎝
Sori (Curvature) approx.1.82㎝
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.3.09㎝
Saki-haba(Width at Kissaki) approx.2.09㎝
Kasane (Thickenss) approx. 0.67㎝

Gold foil double Habaki / Shirasaya

Kuro ro-iro nuri saya, uchigatana koshirae
with outer cover, made of grained leather
Whole length: approx. 93cm
Hilt length: approx. 22.4cm

Note by Master Fujishiro Yoshio,
published in August 15,1940

Origami by Master Hon'ami Koson,
published in August 3,1940

Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

Price 2,500,000 JPY

 兼元は戦国期美濃の名流。最上大業物に位列されている孫六兼元を筆頭に、抜群の切れ味と優れた操作性を誇った戦国期最大のブランドである。
 表題の刀は孫六に最も近しい門人の作であろう、銘字(注③)が孫六然とし、また出来も頗る優れている。僅かに区が送られて二尺二寸を切る扱い易い長さとされ、身幅広く鎬筋が強く張り、やや狭めの鎬地の肉が削ぎ落され、反り高く先反りも加わり、中鋒やや延びて力感のある雄刀で、棟の中程に左前方からの敵の強烈な一撃を払った痕跡を留めている。小杢目鍛えの地鉄は、刃寄りが僅かに柾気を帯びて深く錬れて詰み、小粒の地沸が厚く付いて潤いがあると共に、細かな地景が働いて地肌に生気が満ち、鮮明に立ち現れた関映りが焼刃の変化を映して乱れ、玄妙で美しい景色を呈している。刃文は尖刃交じりの互の目乱で、二つ三つ二つと連れて抑揚変化し、匂勝ちに小沸が付いて刃縁の光も強く、焼頭が匂で地に突き入り、焼の谷から足長く射して刃先に抜け、この足を遮って細かな金線と砂流しが掛かり、刃中は匂で澄む。帽子は鮮やかに乱れ込み、掃き掛けて丸く返る。鷹ノ羽鑢で仕立てられた茎に堂々と刻された銘字は、この兼元が孫六に最も近しい存在であったことを示している。
 拵は素早い抜刀(注④)の際に袂が邪魔にならぬよう柄頭を縁に比して殊に小さく仕立てた、典型的な尾張拵。尾張藩の武辺の士の佩刀であろう、内外ともに出来が優れ、得難い逸品となっている。

注①…「孫六初代兼元眞作記録」「美濃國関住 孫六初代」。

注②…「関孫六兼元…代金子百五拾枚」。

注③…『室町期美濃刀工の研究』所載の大永七年、八年紀の孫六兼元の刀の銘字に極似している。

注④…尾張徳川家の兵法指南役柳生利厳の新陰流では、間合いを図り、斬りかかってきた相手の刀をかわして切るを極意とし、寸法が短い刀が好まれ、拵にも操作性の良さが求められた。

注⑤…鯉口の若葉が大きく、栗形の肩が張る等特色が顕著。素銅地の旧鎺、鵐目も尾張の掟通り。

刀 銘 兼元(大業物)刀 銘 兼元(大業物)刀 銘 兼元(大業物) 白鞘

 

黒蝋色塗鞘打刀拵 刀 銘 兼元(大業物)

刀 銘 兼元 差表切先刀 銘 兼元 差表中央刀 銘 兼元 差表ハバキ上

刀 銘 兼元 差裏切先刀 銘 兼元 中央刀 銘 兼元 差裏ハバキ上


刀 銘 兼元ハバキ

兼元押形