脇差
銘 陸奥大掾三善長道
(最上大業物)

Wakizashi
Mutsu daijo Miyoshi NAGAMICHI
(Saijo O Wazamono)


陸奥国 寛文頃 約三百五十年前

刃長 一尺七寸二分五厘
反り 三分三厘
元幅 一寸五厘
先幅 七分二厘
棟重ね 二分六厘半
鎬重ね 二分四厘

金着二重ハバキ 白鞘入

平成九年愛知県登録

特別保存刀剣鑑定書  

Mutsu province
Kanbun era (A.D.1661-1672, early Edo period)
About 350 years ago

Hacho (Edge length) 52.3㎝
Sori (Curvature) approx.1㎝
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.3.18㎝
Saki-haba(Width at Kissaki) approx.2.18㎝
Kasane (Thickenss) approx. 0.8㎝

Gold foil double Habaki / Shirasaya

Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

 三善長道は会津藩松平家に仕えた寛文頃の刀工で、初銘を道長と切り、万治元年八月十三日に二十六歳で陸奥大掾を受領している(注①)。得意とした二つずつに連れた互の目乱の刃文は長曽祢虎徹の瓢箪刃を想わせ、しかも切れ味が抜群に優れて虎徹と同じ最上(さいじょう)大業物(おおわざもの)に位列されていることから古来「会津虎徹」と称され、地元は勿論、広く刀界で愛されている。
 この脇差は、身幅広く両区が深く残された健全体配。重ねが厚く、刃先の贅肉が削ぎ落された造り込みは優れた切れ味の証明。地鉄は鎬地に柾が強く流れ、太い地景が入った板目鍛えの平地は肌目起ち、粒立った地沸が厚く付いて明るい鉄色を呈する。刃文は浅い湾れに尖りごころの刃、得意の二つ連れた互の目を交えて抑揚変化し、沸が厚く付いて刃縁の光も強く、刃境には金線、細かな砂流しが掛かり、清く澄んだ刃中に足が太く入って刃味の良さが歴然。帽子も横手を強く焼き込んで小丸に返り、虎徹に酷似。茎に刻された神妙な銘字に長道の篤実な人柄が滲んでいる。尚武の気風が強い会津藩士の需(注②)で精鍛された大小一腰の小刀であろう。三善長道の特色が顕著でしかも出来の優れた一振となっている。

注①…道長の銘では平安時代の関白藤原道長と同名になることから、長道と変えることで受領が許された(小島つとむ「陸奥大掾三善長 道の受領の時期と改名の事由について」『刀剣美術』五八八号参照)。

注②…実は会津の武家旧蔵品で昭和二十六年に福島県で登録されたが、平成九年愛知の所持者が登録証を紛失したため再交付された。

脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物)脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物)脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物) 白鞘

 

 

脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物) 差表切先脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物) 差表中央脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物) 差表ハバキ上

脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物) 差裏切先脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物) 中央脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物) 差裏ハバキ上


脇差 銘 陸奥大掾三善長道(最上大業物)ハバキ

長道押形