江戸時代最初期の寸法の短い脇差が収められていた拵。七五三に刻まれた筋が綺麗に揃い、同時代に隆盛した傾奇と呼ばれる美意識にも通じる華やかな朱の漆塗が活かされている。備えられている金具はいずれも、漆黒の赤銅地と金の五三桐紋の対比からなる色調の妙が示された造り込み。鐔は切羽台と耳際が薄手の布袋腹形の仕立てに日足状の鑢目を施した作で、桐紋の花の脇に刻された麦鏨が風格ある景色となっている。小柄笄の二所は赤銅石目地に、銀の樋定規と金の桐紋を彫り表した伝統丁な出来。目貫、縁頭を含めて総計三十二の桐紋が散らされている。