Hacho (Edge length) 69.9㎝
Sori (Curvature) approx. 1.21㎝
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.3.3㎝
Saki-haba(Width at Kissaki) approx.2.3㎝
Kasane (Thickenss) approx. 0.75㎝
Engraving
"Bonji-So-kenmakiryu inkoku (Omote)
"Sanko tsukatuki ken inkoku" (Ura)
Price 2,800,000 JPY
文政二年奥州白河に生まれた泰龍斎宗寛は、江戸に出て切れ味で鳴る同郷の先達固山宗次に師事し、自らも大業物に擬えられる数多の刀を製作している(注①)。師の作風に独創を加味した「小豆を並べたような」と表現される、焼幅の低い小互の目出来こそ宗寛の特徴的刃文構成。また刀身彫刻も得意とし、引き締まった彫口になる多くの剣巻龍彫を遺している(注②)。天保七年には師の推挙で古河藩工に迎えられている。
この刀は、元先の身幅が広く重ねも厚く、中鋒が延び、反りを控えめに刺突の効用を高めた、南北朝時代の大太刀を磨り上げたような、美しいながらも骨太な感のある造り込み。彫物上手で知られる宗寛の、彫口鋭く彫の奥底までシャープに処理された、剣巻龍と三鈷柄付剣の鮮やかな刀身彫が、表裏重ね彫に意匠されて一際存在感を高めている。鎬地柾目、平地小板目鍛えとされて清く詰み澄んだ地鉄は細やかな地沸で覆われ、所々に板目が現れて躍動的な肌合いとなる。刃文は、常に比して高低変化のある小互の目乱刃。区下焼き込みから始まり、丸みのある互の目に小丁子、所々尖りごころの刃を交え、横手からも同じ調子で帽子へと乱れ込み、先端は地蔵風に乱れて返り、棟の所々をごく浅く焼施す。彫刻が施されて美しいだけではない、実用への配慮にも怠りのない出来となっている。錆の浅い茎には、香包鑢が施され、未だ隷書体になる以前ながら、謹直な性格を示すような独特の書体の銘が刻されている。
注①…文久二年紀の刀で「太々裁断切手山田吉年(花押)」の銘のある刀が遺されている。太々とは肩甲骨の辺りを胴切としたこと。『銀座情報』四百十一号掲載。他、文久三年紀作の「裁割太々…」などと刻された作がある。『銀座情報』百六十八号掲載。
注②…真の剣巻龍地肉彫が施された文久元年紀の平造脇差がある。『銀座情報』二百九十二号。