脇差
銘 藤原行久

Wakizashi
Fujiwara no YUKIHISA


豊後国 寛永頃 約三百五十年前

刃長 一尺七寸八分二厘
反り 二分六厘
元幅 九分六厘
先幅 六分六厘
棟重ね 一分九厘
鎬重ね 二分三厘
彫刻 表裏 棒樋丸止

銀無垢一重ハバキ 白鞘入

昭和三十六年新潟県登録
保存刀剣鑑定書

Bungo province
Kan'ei era (A.D.1624-1644, early Edo period)
About 350 years ago

Hacho (Edge length) 54㎝
Sori (Curvature) approx. 0.79㎝
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.2.91㎝
Saki-haba(Width at Kissaki) approx.2㎝
Kasane (Thickenss) approx. 0.7㎝
Engraving: "Bo-hi" maru-dome on the both sides

Solid silver single Habaki / Shirasaya

Hozon certificate by NBTHK

 江戸時代初期寛永頃の豊後国高田鍛冶、藤原行久の(注)脇差。寸法長めに浅く反って中鋒、棒樋が掻かれ、刃肉が削がれて絶妙に重量が調整されている。素早く抜いて相手の小手先を切る最小限かつ最有効の攻撃も可能な、柳生新陰流の武士が好んだ体配。小板目鍛えの地鉄は小粒の地沸が厚く付き、光を強く反射して輝く動感のある肌合い。さらに刃区付近から立ち昇った映りに感応して揺らぐ様子は春霞を想わせる。この玄妙な景色こそ古刀期以来継承されてきた豊後高田の備前伝。互の目丁子の刃文は平地に突き入るような尖刃を交えて高低に変化し、微細な沸で刃縁が締まり、匂が立ち込めて澄んだ刃中には足、葉が入って抜群の刃味の良さを窺わせている。帽子は焼を充分に残し、浅く乱れ込んで突き上げて浅く返る。関ケ原合戦の記憶が残る江戸前期、武具への備えに怠りのない武士の為に鍛造された精悍な一振である。

注…細鑚で「藤原行長」と銘する慶長元和頃の刀工に対し、「豊州高田住藤原行長」と太鑚で長銘に刻する刀工がある。中原信夫氏は『大分県の刀』で、これを「(慶長頃の)行長の次の代」と推考している。

脇脇差 銘 藤原行久脇差 銘 藤原行久脇差 銘 藤原行久 白鞘

 

脇差 銘 藤原行久 差表切先脇差 銘 藤原行久 差表中央脇差 銘 藤原行久 差表ハバキ上

脇差 銘 藤原行久差裏切先脇差 銘 藤原行久 差裏中央脇差 銘 藤原行久 差裏 ハバキ上

 

脇差 銘 藤原行久 ハバキ