刃長 一尺三寸五分
反り 一分三厘
元幅 一寸
先幅 七分九厘
棟重ね 二分一厘
金着一重ハバキ 白鞘付
棕櫚微塵塗込鞘脇差拵
拵全長 二尺一寸三分
柄長 五寸一分
藤代義雄『日本刀工辞典新刀篇』所載
平成十九年兵庫県登録
特別保存刀剣鑑定書
Hacho (Edge length) 40.9㎝
Sori (Curvature) approx. 0.4㎝
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.3.03㎝
Saki-haba(Width at Kissaki) approx.2.39㎝
Kasane (Thickenss) approx. 0.64㎝
Put in "Nihon toko jiten"
authored by Fujishiro Yoshio
Shuro mijin nurikome saya, wakizashi koshirae
Whole length: approx. 64.5cm
Hilt length: approx. 15.5cm
手柄山正繁は宝暦十年播州姫路の生まれ。天明八年に寛政の改革で名高い老中松平定信に召し抱えられ、江戸駿河台に鍛冶場を構えた。正繁は、定信が寛政三年将軍家斉に献上した龍図彫の大小一腰を精鍛し、また寛政五年に幕府炮術師範浅羽主馬を賞する為の刀を打ち、国防の要、炮術の普及に寄与する等、改革を推進する定信の為に精勤した。居合の自流を開き、文化と工芸を愛した文化人定信が、正繁に一筆認めて与えたのが「神妙」の二文字。正繁は、その書体を模して会心作に刻した(注)のであった。
この脇差は文政四年二月の大坂打ちで、鎺元に「神妙」の文字が刻された傑作。常に見る鎬造とは異なり、差表の刃寄りに鎬筋を立てた片切刃造とされ、刃先の線、鎬筋、棟の稜線が縦に揃って凛然たる美しさ。小板目鍛えの地鉄は地景が肌目を縫うように入って緻密に肌起ち、初霜のような沸で覆われて透き通るような肌合い。刃文はゆったりとした湾れに小互の目を交え、ふわりと降り積もった淡雪のような沸の粒子で刃縁が明るく、無数の足が入り、刃中に細かな沸の粒子が充満して霞立つように澄む。帽子は先が突き上げ、僅かに掃き掛けて小丸に返る。着物の合わせ目を想わせる正繁独特の香包鑢仕立の茎に、謹直な書体で銘字が刻されている。正繁の熟練の技が発揮された、「神妙」の文字に相応しい上々の仕上がりとなっている。
光によって金色の輝きを呈する棕梠微塵塗鞘の、綺麗な拵に収められている。