刃長 一尺七寸八分二厘
反り 四分六厘
元幅 一寸八厘半
先幅 七分六厘
重ね 二分三厘
金着二重ハバキ 白鞘入
平成十四年埼玉県登録
特別保存刀剣鑑定書 (六代)
Hacho (Edge length) 54㎝
Sori (Curvature) approx. 1.39㎝
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx. 3.29㎝
Saki-haba(Width at Kissaki) approx.2.3㎝
Kasane (Thickenss) approx. 0.7㎝
Gold foil double Habaki / Shirasaya
肥前国の六代目忠吉は五代の次男で、元文元年の生まれ。幼い頃から鍛冶の修業を積んでいたが、父が長命であったため、家督を継ぎ近江守を受領したのは寛政二年六月二十四日、五十五歳であった。天性の技量を備えてはいたが、折からの刀剣需要が低迷の時代背景にあり、父、祖父と同様に自らも八十歳の長命を得たものの遺作は比較的少ない。しかし、他国においても刀工の数が激減したこの時代にあって研鑽努力を惜しむことなく技術練磨に励み、業物作者に列せられる刃味を誇った。
この脇差は、元先の身幅が広く、適度な寸法に適度な輪反りが付いて中鋒延びごころの安定感のある姿格好。さらに大切に伝えられて研数も少なかったのであろう、平肉が付いて重量があり、刃区深く生ぶ刃が残されている抜群の健全体。小杢を交えた小板目鍛えの地鉄は、区下から鋒まで一点の緩みもなく均質に詰み澄んで美しく、しかも小杢目肌に沿って繊細緻密な網目状の地景が現れ、これが細やかな地沸で覆われて全面に沸映りが立ち、肥前刀の特性を物語る極上の小糠肌となって見る者を感動に導く。刃文は粒子の揃った小沸の帯が連なる簡潔な直刃で、物打辺りに浅い湯走りが組み込まれて帽子は端正な小丸に返る。匂が満ちて透明感のある刃中は一点の澱もなく澄んで、ここも肥前刀の極致を示している。