穂長 三寸四分六厘
元幅 五分二厘
重ね 二分五厘
茎長 六寸
彫刻 裏 打樋
金梨子地塗杏葉紋唐草蒔絵鞘槍拵入
拵全長 四尺
鞘長 五寸六分
柄長 三尺四寸七分
鍋島家伝来 桐箱付
印籠刻黒石目地雲地文塗鞘合口拵入
拵全長 四尺
鞘長 五寸六分
柄長 三尺四寸七分
平成二十六年東京都登録
保存刀剣鑑定書
Owned by Nabeshima family
Hocho (Spear length) 10.5㎝Special Kiri Box
Kin nashiji nuri "Gyoyo" crest and "Karakusa" makie saya, yari koshirae
Whole length approx. 121cm
Scabbard length approx. 17cm
Hilt length approx. 105cm
綺麗な柄鞘に鍋島家の杏葉紋が蒔絵された槍拵の奥州會津住下坂の槍。下坂は近江国坂田郡下坂庄出身の刀工で、近江から各地へ移住。家康の御前で打ち、葵紋と康の字を拝領した越前康継もその一人である。会津下坂の元祖は下坂甚兵衛為康。近江下坂康綱の養子だが、実は戦国武将朝倉義景の家臣真柄十郎左衛門の末子。真柄が長刀を打ち振るって姉川の戦で散った後、姉の夫下坂康綱の許で育ち、刀工となり、秀吉の賤ケ岳七本槍の一人加藤嘉明に召し抱えられて転戦。会津領主となった加藤に付き従い寛永四年会津に入った。
この槍は江戸初期の会津下坂の作とみられ、小振りながら鎬筋強く張って重ね厚く樋が掻かれ、刺突と操作性に優れ、短寸ながらも威力のある恐るべき武器。柾目鍛えの地鉄は、肌目に沿って流れるように小沸が付き、淡く湯走りが掛かって堅固に焼き締められている。直刃の刃文は浅く揺れ、小沸が付いて匂口の光柔らかく、刃境に湯走りが掛かかって二重刃ごころとなる。
付帯する拵の柄と鞘は金梨地塗の下地に唐草図金蒔絵が施されて豪華。しかも鍋島杏葉紋が鞘に二つ、柄に四つ厚手の金粉溜塗で付されている。装う金具は銀無垢磨地の一作。通常は鉄製の鐺も銀製ながら鎬が立てられて先端尖って装飾のみならず攻撃力がある。身分ある武士が手元に置いた極上の手槍である。