円相図鐔
無銘 平田
禅の教えとしても知られる一円の相を、肥後金工平田彦三独特の彫法で表現した作。この同心円が轆轤台において形成される皿や椀に見立てられて「轆轤鑢」と呼ばれているのは、茶の美意識を伝える肥後金工らしい味わいの追求から。
素銅地を真丸形に造り込み、耳を立て、轆轤を挽いたように円相を彫り出した簡潔な彫口で、地面に現れたごく細い筋の質感が指先に伝わり来る。
山銅風に古調な素銅地は、時を重ねて表面に微細な皺が生じ、しっとりと落ち着いた色合いを呈して味わいが格別。腕抜緒の小穴も簡潔で用の美観がある。