樋定規図笄 無銘 古金工
実用の時代に重宝され、伝え遺されてきた古笄。漆黒の赤銅地を魚子地に仕立て、その中央に樋定規のみを高彫に表現した、古風で貫禄のある作。魚子地は手擦れで減り、櫃や洲浜の角部、蕨手などもなだらかになっている。その古調な状態こそ実用武具の魅力であり、江戸時代後期の切り立つような彫口の作には求め得ない四百数十年の時間の積み重なりに他ならない。天正拵などに装着し、時代観を鮮明にして楽しみたい。