波車透図鐔
無銘 柳生
武士道をそなえた貫く者に高い人気の柳生鐔は、柳生連也斎厳包が新陰流の極意を形として表したもの。中でも波車は、剣術を流れに逆らうことなく回転する水車に擬えた図。
抜刀術に適した小振りなこの鐔は、肉厚く色合い黒々として頑強な表情があり、それを証するように耳に幾重にも鍛え合せた痕跡が層状に現れており、ピンと引き締まった響音を呈するのも魅力。地面にも鍛えた鎚の跡が残されており、波に潜り込むような構成は暗示的であり、その図柄を薄肉に鋤き込んだ鏨の様子も素朴な風合いを呈している。