平成二年宮崎県登録
天皇陛下(現上皇)が即位されたことを記念して製作された太刀。作者松葉景清刀匠は昭和三十四年二月宮崎県日向市の生まれ。小林康廣師、安藤廣清師に学び、さらに河内國平師の指導を仰いで平成八年に國正と改銘(注)。平成二十六年に無鑑査となる。「我事に於て後悔せず。常に前進の気概をもって生きる」の言葉を胸に、長舩長義の刀、長舩祐定の両刃造短刀、長谷部國信の唐柏の太刀等、深く胸打たれた名品を目標に飽くなき挑戦の日々を送っている。
この太刀は、天皇陛下御即位を寿ぐ気持ちに応え、若き日の松葉刀匠が持てる力を振り絞って鍛造した備前一文字伝。身幅広く重ね厚く、腰反り高く中鋒の鎌倉期の太刀を想わせる姿。鉄色の明るい地鉄は、小板目肌が詰み、地沸厚く付いて地景が細かに入って緻密に肌起つ。焼高く殆ど鎬地にまで及ぶ刃文は、小丁子が連れて複雑に乱れ、満開の桜が彩る早春の野山を想わせる構成。匂口締まりごころに小沸が付いた焼刃は、焼頭が匂で尖って飛焼となり、足と葉が盛んに入り、金線、砂流し掛かり、下半には沸を切り裂くような金筋が長く走り、刃中も春霞のような匂で澄む。帽子は浅く乱れ込んで小丸に返る。茎は製作時そのままに白銀色に輝き、銘文が神妙に刻されている。
青貝微塵塗鞘太刀拵の表裏に九十個付された十六葉菊紋は一つ一つ手で彫られたもので、赤銅磨地に唐草彫の金具の漆黒に映え、内外とも仕上がりは見事である。