平成四年千葉県登録
特別保存刀剣鑑定書
泰龍斎宗寛は文政二年奥州白河の産。固山宗次に入門して修業、天保七年に師の推挙で古河藩工となる。師に劣らぬ刃味を誇り、また刀身彫にも偉才を発揮した。 この刀は、宗寛の特色が顕著で健全無比。身幅広く重ね厚く、鎬筋が強く起って手持ち重く、刃味と威力が充実した体配。小杢目鍛えの地鉄は地沸が均一に付き、地底に細かな地景が蠢いて活力に満ち、淡く横目映りが立ち、鉄色は澄明。草の倶利迦羅と不動梵字、護摩箸は宗寛の自身彫で、彫際が鋭く立って冴え、刀身の美観も上々。刃文は互の目に丁子、尖りごころの刃を交え、常に比して抑揚変化し、刀身中程には金筋が稲妻状に走る。文久二年十月七日に山田浅右衛門吉年(注)が刃味を確かめた截断銘も貴重。 御簾に葵、琵琶に冠を配した源氏物語図鐔を掛け、牡丹図縁頭、秋草図目貫で装われた打刀拵が付帯している。