背負陣太鼓 |
桃山時代 背負紐・桴(ばち)・屋根枠付 |
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本作は、菖蒲革(しょうぶがわ)の背負紐(せおいひも)の付された背負陣太鼓。しかも雨除けの屋根付の枠に収められている。杢目肌が顕著な胴は黒漆塗とされ、三十四個の鋲で留められた革に金箔(きんぱく)が塗られ、中央には黒漆に金の三つ巴紋。太鼓の天地には鉄製の環を附した鉄板が鋲留され、これを天井部に掛け、太鼓下部の環は底板の穴に嵌り、激しく叩かれても外に飛び出さない工夫がされている。革包の断片が遺された木製の桴で叩くと「どんどん」と和太鼓特有の柔らかみのある音が心地よい。決戦ともなれば激しく打ち鳴らされたのであろう、表面の金箔は剥離し革が現れて古色がある。雨除けの屋根は開閉、取り外しが自在で、太鼓本体を引き出すことができる。背板には縦長の穴があり、反対側は格子状となり、湿気と音が籠らないように工夫されている。武士たちの懸命の奮戦を見届けたものであろう。戦陣の音を偲ばせる、頗る珍しい遺作である。 |
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