銘 高天神 金粉銘 兼明

Katana: Signed. Takatenjin
(Kinpun mei)KANEAKI

美濃国 遠江国 天文頃

刃長 二尺四寸四分三厘
反り 五分強
元幅 一寸強
先幅 六分七厘半
棟重ね一分八厘
鎬重ね二分二厘

金着二重ハバキ 白鞘入

黑蠟色塗鞘打刀拵付
 拵全長 三尺五寸五分
 柄長 八寸四分

保存刀剣鑑定書

Mino province - Totoumi province
Tenbun era (A.D.1532-1554, late Muromachi period)

Hacho (Edge length) : 74cm
Sori (Curvature) : Approx. 1.52cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) : Approx. 3.03cm
Saki-haba (Width at Kissaki) : Approx. 2.04cm
Kasane (Thickness) : Approx. 0.67cm

Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)

Kuro ro-iro nuri saya, uchigatana koshriae
 Whole length : Approx. 107.6cm
 Hilt length : Approx. 25.5cm

Hozon certificate by NBTHK

 高天神城(注1)は戦国武将今川氏親が重臣松井宗能に築かせた遠江国南端の山城。比高百メートル程ながら街道筋を睨む地の利に恵まれ「高天神を制する者は遠江を制する」と云われた戦略の要衝で、桶狭間で義元が没した後、城を巡り徳川と武田による激しい争奪戦(注2)が展開されたことで良く知られている。この城下(注3)に来住した高天神兼明は刃味と操作性に優れて武将の信頼厚く、古来人気が高く(注4)、 それが故に激戦のうちに消費され、今日遺作を見る事は極めてない。
 二尺四寸を超えるこの刀は、身幅広く鎬筋強く張って反り高く、先反りも加わり中鋒の、 戦国武将好みの太刀姿。 縮緬状に激しく揺れる板目鍛えの地鉄は、流れごころの肌を交えてねっとりと詰 み、小粒の地沸が厚く付き、鮮明に立った関映りは肌のうねりに感応して揺らぎ、濃淡変化も加わって凄みのある肌合い。刃文は尖刃を交えた互の目に小丁子、矢筈風の刃、三本杉風の刃を交えて小気味よく変化し、匂勝ちに小沸が付いて刃縁の 光強く、小足、飛足を遮るように細かな金線、 流しが流れ、刃中は沸匂で冷たく澄む。 物打辺りの平地中には湯走りから飛焼に変じた沸が光る。
 帽子は乱れ込んで先突き上げて小丸に返る。細かな鷹ノ羽鑢で仕立てられた茎の差裏の「髙天神」 の銘字は、神の最終画の跳ね上がる特徴が顕著で、差表には「兼明」の金粉銘が遺されている。刀身中程の鎬地には敵の刃を受けた疵が遺され、鎬筋上の矢と共に戦場の臨場感を伝えている。


注1・・・現静岡県小笠原郡大東町上土方。
注2・・・おんな城主直虎の養子万千代(井伊直政)は天正九年に徳川家康方として高天神城攻めに参加。 勝頼から同城を奪取している。
注3・・・城の南方約二kmの高天神兼明の鍛刀場跡と伝える場所に碑が立て られている(福永酔剣先生 『刀工遺跡めぐり三三〇選』)。
注4・・・維新の功労者で、孫六兼元をはじめ、刃味の優れた刀を好んだ谷 干城も、高天神の脇差を所持していたことが知られている(『駿遠 豆三州刀工乃研究』)。