雲龍・文字散図鐔
 無銘(江戸肥後 熊谷義之一派)
 

鉄地四ツ木瓜形金銀布目象嵌 毛彫
縦 86.7mm 横 78mm
切羽台厚さ 4.3mm(耳際 2.8mm)

Details

Tsuba: "Unryu, Moji chirashi"(Dragon, 5 characters)

no sign. (Edo higo, Kumagai Yoshiyuki shool)

made of iron, Mokko shape,inlay
86.7mm at Length
78mm at Width
4.3mm at Thickness
2.8mm at rim



 雲天至雨呼 ―雲天に至りて雨を呼ぶ―

鮮やかな金布目象嵌で雲龍を描いた作。

鍛えの良い鉄地を拵に形良く調和する四つ木瓜形に造り込み、太刀鍔の大切羽を意識したのだろうか、鐔の周囲をぐるりと薄肉に鋤き残し地板と耳に境界を作り、銀布目象嵌を施す。地板全体に効果的に打たれた槌目や、大切羽を意匠した部分を囲む境界の敢えて千切れたような意匠に、製作者の拘りが見て取れる。

切羽台と耳の境界部分を沿うように描かれているのは雲龍の図。意図的に疎らに施した銀布目象嵌とは対照的に、こちらは濃密な布目象嵌がなされている。

裏面には龍の出現を想起させる文字が散らされている。

江戸時代末期に江戸肥後、四谷肥後と呼ばれた流派、細川家抱え工の熊谷義之を筆頭とする一派の作だろう。幕末に流行した柄の長めの講武所拵などに映える作である。

鐔 無銘(江戸肥後 熊谷義之一派) 雲龍・文字散図