親子鶏図縁頭
銘 一柳軒信政(花押)
鶏はもっとも古くから飼育されているキジ科の家禽で、日本へは弥生時代頃に伝来したとされている。雉や鶏は古来より神聖な鳥とされ、神社の鳥居の語源は魔を祓う神聖な鳥であった鶏の止まる止まり木であったという説もある。
また鮮やかな朱色の鶏冠に黄金色の脚、紫色を帯びた漆黒の尾羽に深緑色、曙光を想わせる山吹色、白といった羽色の色彩の艶やかさから、画題としても好まれ、伊藤若冲や葛飾北斎らが同画題の傑作を残している。
この縁頭もまた、姿の美しい鶏の姿を丁寧に描出したものである。金色鮮やかな金無垢地を容彫として縁頭の裏側から紋を留め付けている。細かな鏨遣いで、羽毛や鶏冠の質感が丹念に表現されており、水戸金工らしい丹念な表現手法が伺える。
親鳥にぴたりと寄り添う雛の姿が愛らしい。
たっぷりとした見事な尾羽が大変美しい姿をしている。
水戸の金工、信政の造形能力の高さが伺える。