縦(length)69.7mm 横(width)57mm 切羽台厚さ(thickness)6.4mm
重量(weight)123g
鉄槌目地変り形小透 made of iron, Kawari shape
明珍氏/武蔵国江戸住/江戸時代後期
Myochin family / lived in Edo city, Musashi province / late Edo period
紀宗政は甲冑工として名高い明珍家の工で、江戸明珍宗家の二十六代目を継ぐ。紀姓を称し、大隅守のち長門守を受領氏し、式部丞の官名を名乗る。鳩丸鐔は彼が良く手掛けた代表的意匠の一つである。ぽってりと厚みがあり鉄の味わいよく、鳩を象った造り込みはすっきりと造形され小振りで締まった印象。銘に刻されている鳩御太刀は、『集古十種』にも「鳩丸短刀」なる拵が収録されており(注1)、江戸中~後期、安永年間に出された『刀剣図譜』にはこの鐔と同様の、鳩丸鐔が掛けられた拵が収録されている。宗政以外にも二子山則亮の遺作にも同図の鐔が見られる(注2)。
鳩は言わずと知れた、八万神の使神であり、八幡神を氏神として厚く信仰した源氏とは殊に縁が深い。一矢三鎧の逸話でも名高い源義家は、石清水八幡宮で元服し、「八幡太郎義家」と通称されている。
注1 同書に収録されている短刀拵は、鐔は鐔袋に包まれ詳細は不明ながら、ハバキ、縁頭(但し縁は鍔袋に包まれている)には鳩の彫、そして目貫は金無垢の鳩であると記されている。
注2 佐藤寒山監修 『二子山則亮考』所載。