脇差
銘 武蔵大掾藤原忠廣
(最上大業物)

Wakizashi
Sig. Musashi daijo Fujiwara no TADAHIRO
(Saijo O Wazamono)


肥前国 寛永初年頃 約三百九十五年前

刃長 一尺二寸七分
反り 二分
元幅 九分三厘
棟重ね 一分四厘
鎬重ね 二分三厘

金色絵二重ハバキ 白鞘入

昭和三十六年静岡県登録
特別保存刀剣鑑定書

Hizen province
early Kan'ei era
(1620s, early Edo period)
about 395 years ago

Hacho (Edge length) 38.5㎝
Curvature approx. 0.61cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.2.82㎝
Kasane (Thickness) approx.0.7㎝ at Shinogi

Gold iroe double Habaki / Shirasaya


Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

 武蔵大掾忠廣は「五字忠」こと肥前國忠吉同人。佐賀藩主鍋島勝茂の命により、慶長元年に上京して埋忠明壽門で修業。元和十年にも再び明壽に就いて学び、武蔵大掾を受領した。忠廣自身、戦火に祖父と父を喪い、武将の栄枯盛衰の厳しさを肌身に感じて生きて来た故であろう、精良ながら詰み過ぎず古色ある地鉄に自然味のある、戦国気質を感じさせる刃文構成を専らとした。
 この脇差は、銘形から大坂夏の陣の記憶が残る寛永二年八月頃(注①)の作と鑑られ、鎬地の肉が削ぎ落されて鎬筋が棟に抜ける頑健鋭利な冠落造で、適度に反りが付き、至近の敵や咄嗟の攻撃に素早く抜き放って応じるべく、長い刀に差し副えられた操作性の高い作。板目鍛えの地鉄は鎬地にも板目肌が屈強に現れ、肌目が起って地沸が厚く付き、地底に地景が太く入り、小粒の地沸が輝いて沸映りが立つ。刃文は二つ連れた互の目に尖りごころの刃を交えて抑揚変化し、銀砂のような沸の粒子で刃縁明るく、細かな金線、砂流しが掛かり、沸で明るい刃中に沸足が太く盛んに入る。帽子は焼深くよく沸付き、突き上げて長めに返る。掌中への収まりが良い茎に、銘字が神妙に刻されている。困難な造り込みながら手際よく造られ、志津兼氏を想わせる(注②)刃文も自然味があって見事。忠廣の心技充実ぶりが示された優品である(注②)。

注①掾の第八画が右に流れるのは寛永元年二年以降の特色で、さらに藤の第十二画が上に僅かに上に突き出る点から寛永二年八月頃と絞り込まれる(『肥前刀大鑑 忠吉篇』参照)。

注②鍋島家より作刀の命を受けた中に志津写しがあり、忠吉は志津をも研究対象としたことが知られる。

注③但し、古研ぎのため細かなヒケや小錆があるが、敢えて昔日の名手の研磨を残したものである。ご希望により、原価にて研磨を承ります。

脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣 白鞘

脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣 差表切先脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣 刀身 差表中央脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣 差表ハバキ上

脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣 差裏切先脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣 刀身 差裏中央脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣 差裏ハバキ上

 

脇差 銘 武蔵大掾藤原忠廣 ハバキ