短刀 銘 備州長舩清光 天文二年八月日
備前国 天文二年 四百八十八年前 昭和四十七年福島県登録
保存刀剣鑑定書
Tanto:
Sig. Bishu Osafune KIYOMITSU
Tenbun 2 nen 8 gatsujitsu
艶やかで美しい輝きのある黒蝋色塗鞘の短刀拵。鞘にはコオロギ、バッタ、鈴虫等、夜の静寂に鳴く虫たちと、辺りを窺う蟷螂の姿が陰蒔絵され、長い触角を広げて虫の気配に全神経を集中させ、鎌をもたげた蟷螂の姿には一種の緊張感が感じられる。色漆を使うのではなく、陰蒔絵で繊細に描かせているところに注文主の美意識が現れている。柄は白鮫皮着で、巴を三つ組み合わせた形の紋の目釘が付され、その他の総金具は菊花図銀金具。厚みのある銀地が鋤き下げられて浮かび上がった菊花は瑞々しく、殊に明るい銀色に輝く様は上品。折金と裏瓦も菊花図で、笄のみ銀小刻の割笄ながら、全体の雰囲気に調和している。口金は棟方に張り出し、そこに設けられた穴に下緒を通す趣向で洒落ている。
付帯する短刀は天文二年紀の備前長舩清光の短刀。元来の重ねが厚く、内反りが付いてふくらの枯れた鋭利な姿。板目鍛えの地鉄は地景で肌起ち、刃寄りの暗帯部が澄んで映りが立つ。腰刃から始まる直刃は小沸が付き、物打辺が潤むも総じて匂口締まって明るい。帽子は小丸。小傷はあるが、戦国期の短刀らしい一口である。