黒漆変り塗鞘小さ刀拵入
拵全長 一尺六寸三分
柄長 三寸二分
平成二十七年東京都登録
特別保存刀剣鑑定書
幕末期動乱の時代。寺田屋事件、池田屋事件をはじめ、室内での斬り合いも増えていた。表題の舞鶴友英の脇差は、寸を短く身幅広く大鋒に仕立てた特異な姿。拵に装着すると総重量は〇・七キロとなり、ずっしりとした確かな手応えがある。柄は極めて短く、室内においての利便性を想定していることは明らか。板目鍛えの地鉄は地景が明瞭に働いて地沸が厚く精強。焼幅広く沸深い互の目乱刃(注①)が焼かれ、帽子の焼も深い。鎬地の肉が大胆に削ぎ落されて鎬筋立ち、刃の通り抜けの良さを感じさせ、操作性、頑健さ、切れ味の三拍子揃った剛の一振となっている。
高位の武士の差料とされたもので、美観は上々。螺旋状の浅い刻みを施して黒漆塗とした鞘は光沢に変化があり見栄えよく、小柄は咲き匂う満開の桜に埋め尽くされた吉野図で、柄前にも桜花図目貫が付されて豪華。銀地の縁頭は逆巻く波に雨龍図、鐔は波頭を切って飛ぶ千鳥図で、鐺も立浪文図。拵の外見からは、凄みのある脇差が収められていようとは想像すらできないであろう。
友英は河内国狭山藩北条家の刀工で、江戸麹町の屋敷(注②)でも打つ。遺作に「所鍛之餅鐵者産于盛岡封内」(鍛える所の餅鐵は盛岡封内に産す)と添銘入りの萬延元申年八月吉日紀の刀(『日本刀工辞典』)があり、造り込みや地刃の工夫に心血を注いでいる。