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國次は江戸前期の京の名匠出羽大掾國路の門人。専ら師の作刀に協力した故であろう、自作は尠ないが、國次の鑚で師と自身銘を刻した合作刀(注①)もあり、師の國次への信頼の厚さが知られる。寛永十四年四月十七日越前大掾を冠した國路との合作刀(注②)を物にしており、受領はその頃。浅い湾れに互の目を配した沸出来の作は國路に全く遜色がなく、國次なくして出羽大掾なしの感を抱かせるものがある。
この薙刀は、棟を真に造り、幅広で両区深く、腰元に薙刀樋が深く掻かれ、その上の鎬地の肉が大胆に削ぎ落され、ふくら強く張って先反り付き、薙ぎ払う威力が明瞭に体現された、師國路の薙刀(注③)と同断の姿。地鉄は鎬地に柾目肌が強く流れ、平地は板目に柾を配して強く肌起ち、地景太く入り、粒立った地沸が厚く付き、鉄色は明るい。刃文はゆったりとした湾れに大互の目乱。尖りごころの刃を交え、先へ行って焼高くして奔放に変化し、銀砂のような沸で刃縁明るく、小形の金線、砂流しかかり、沸足盛んに入り、刃中は匂で霞立つ。帽子は浅く乱れ込み、金線、砂流しを伴って突き上げて小丸に返り、師國路と同じ三品帽子(注④)となる。茎はこれも師國路と同じ栗尻に仕立てられ、太鑚で強く刻された銘字に鑚枕立ち、原の第三画は左から右へ水平に刻され、國次の銘字の特色が顕著。師國路得意の相州伝の作風が遺憾なく発揮され、同作薙刀中の傑作となっている。
黒漆塗鞘薙刀拵が付されている。