銘 (枝菊紋)近江守源久道

Katana
(Edagiku mon) Omi no kami Minamoto no HISAMICHI


山城国 天和頃 約三百三十七年前

刃長 二尺四寸九分五厘
反り 六分
元幅 一寸一分二厘
先幅 七分四厘
棟重ね 二分四厘
鎬重ね 二分五厘

金着二重ハバキ 白鞘入


昭和二十六年熊本県登録
特別保存刀剣鑑定書

Yamashiro province
Tenna era
(late 17th century, early Edo period)
about 337 years ago

Hacho (Edge length) 75.7㎝
Sori (Curvature) approx. 1.82㎝
Motohaba (Width at Ha-machi) approx.3.39㎝
Sakihaba(Width at Kissaki) approx. 2.24㎝
Kasane (Thickness) approx. 0.76㎝
Gold foil double Habaki / Shirasaya


Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

近江守久道(おうみのかみひさみち)初代は寛永四年近江国野洲郡野村の生まれで、名を堀六郎兵衛という。和泉守来金道門で修業し、寛文二年に近江守を受領、京都西洞院夷川に居住して朝廷の御用を勤めた。力感漲る造り込みに、覇気に満ちた乱出来の作を以て知られ、『新刀辨疑』巻四で「古風得實の鍛冶」と絶賛されている。
この刀は二尺五寸近い長寸で、身幅極めて広く重ね厚く、反り高く付いて中鋒の威風堂々の体配。地鉄は板目に杢、刃寄りに柾を配して肌目起ち、鎬地に柾目肌が強く流れ、地景が太く力強く入り、粒立った地沸が厚く付き、処々に地斑を交えて活力に満ちた肌合いとなる。長い京焼出しから始まる刃文は浅い湾れに互の目、丸みのある刃を配し、刃縁に純白の小沸が降り積もって明るく、刃境に湯走り、細かな金線、砂流しが盛んに掛かり、足長く射し、匂立ち込めた刃中は冷たく澄みわたって刃味の良さを窺わせる。帽子は焼を充分に残し、僅かに弛んで掃き掛けて小丸に返る典型的な三品帽子。茎の保存状態は良好で錆味優れ、太鑚で力強く刻された銘字は今なお鑚枕が立ち、三品家の看板ともいうべき枝菊紋(注①)が誇らしげに刻されている。典型的でしかも出来優れ、日本鍛冶宗匠の三品家の一翼を担った近江守久道の心技充実期に手掛けられた貫禄の一刀(注②)となっている。

注①十六葉菊紋の天和三年吉日紀の刀(『日本刀工辞典』)の銘字と、枝菊紋の同年八月吉日紀の刀(『銀座情報』三五三号)の銘字は明らかに初代の銘で、両者は酷似し、枝菊紋のある作は二代久道の代作代銘とする通説は全くの俗説とわかる。
注②本作同様、枝菊紋を刻し、精美な地鉄に濤瀾風の大互の目乱刃を焼いた二尺三寸二分六厘の刀(第三十三回重要刀剣)がある。

刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道 白鞘

刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道 差表切先刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道 差表中央刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道 差表ハバキ上

刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道 差裏切先刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道 差裏中央刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道 差裏ハバキ上

刀 銘 (枝菊紋)近江守源久道 ハバキ