伯耆国―因幡国―山城国　慶応　百五十一年前

刃長 一尺六寸一分　反り 三分三厘
元幅 一寸一分八厘強
棟重ね 二分四厘　鎬重ね 二分五厘
彫刻 表裏 薙刀樋角止･添樋
金着一重はばき　白鞘入

平成三十年東京都登録
特別保存刀剣鑑定書

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Hoki - Inaba - Yamashiro province
Keio 3 ( 1867 A.D., the end of Tokugawa shogunate) , 151 years ago

Hacho (Edge length) 48.8cm / Sori (Curveture) 1.0cm
Motohaba (width at Ha-machi) 3.6cm
Kasane (thickenss) 0.78cm
Engraving; "Naginata-hi, Kaku-dome, Soe-hi" on the both sides
Gold foil single Habaki, Shirasaya

Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

800,000JPY

　菅原包則は天保元年伯耆国の産まれ。嘉永四年備前祐包に入門し安政五年に独立、因州池田家に仕えた。文久三年には京都の三条堀川に移り、慶応二年有栖川宮熾仁親王と結縁し、その推挙で孝明天皇の御剣を鍛え、能登守を受領。また、戊辰戦争で東征軍総裁となった有栖川宮に従軍して近江陣中で鍛刀(注)しており、同宮の信頼の程を窺わせている。
　この脇差は、刀身中程から先の鎬地の肉が大胆に削ぎ落されて鎬筋が棟に抜ける冠落の造り込み。重ねが厚く、元先の身幅が極めて広く両区深々と残り、腰元に薙刀樋が掻かれてもなお手持ちが頗る重く、総体に力感漲った豪快な作。地鉄は小板目に小杢目を交え、細かな地景が脈々と入り、小粒の地沸が昂然と輝き、鉄色晴々として美しい。刃文は短い直焼出しから始まり、腰元が互の目乱、上判が直刃で、帽子は浅く乱れ込み、わずかに掃き掛け、表は棟に寄り、裏はやや突き上げて小丸に返る。丁子乱刃が連なった腰刃は小沸やや深くつき、直刃は穏やかな小互の目、小丁子、地側に射し込むような足状の働きと湯走りを交え、匂口締まりごころに小沸がついて刃縁明るく、物打辺りには小足が入り、刃中にも淡い杢状の肌が現れるなど変化に富んでいる。茎の保存状態は極めて良好で底白く輝き、京三条の住居地銘と注文主の名が細鑚で入念に刻され、能登守の受領銘も誇らしげである。鮮烈な造り込みと地刃、心技体充実した包則の畢生の一振というべきであろう。

注…「於江州陣中鍛之　君万歳」の添銘のある慶應四年二月十五日紀の太刀（『銀座情報』三四八号）がある。