肥前国 天和頃 約三百三十五年前
刃長 一尺八寸三分二厘 反り 四分三厘
元幅 一寸五厘強 先幅 七分四厘
棟重ね一分八厘 鎬重ね 二分五厘半
素銅一重はばき 白鞘付
研出鮫鞘脇差拵入
拵全長 二尺六寸五分
柄長 六寸八分
昭和三十九年香川県登録
保存刀剣鑑定書(三代)
35万円(消費税込)
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Hizen province / Tenna era (early Edo period) , about 335 years ago
Hacho (Edge length) 55.5cm / Sori (Curveture) approx. 1.31cm
Motohaba (width at Ha-machi) approx. 3.19cm / Saki-haba (with at Kissaki) approx. 2.24cm
Kasane (thickenss) approx.0.77cm
Suaka single Habaki, Shirasaya
Togidashi samezaya wakizashi koshirae
Whole length; approx. 80.3cm
Hilt length; approx.20.6cm
Hozon certificate by NBTHK (3rd generation)
350,000 JPY
肥前国佐賀藩の刀工として、忠吉家と双璧をなすのが伊豫掾宗次家である。宗次家は忠吉家とは別系で、慶長十三年の奥付のある『伊豫掾宗次系図』によると、刀鍛冶としての祖は鎌倉後期まで遡るという。新刀期における初代は慶長十一年に伊豫掾を受領した宗次で、本作はその三代目。三代宗次には「試割鉄甲」と銘された遺例がいくつか伝えられている(注@)。
この脇差は、一門の特徴でもある鉄兜や鉄具足などの堅物切りに適した、平肉の厚いがっしりとした造り込み。寸法長めに鋒延び、鎬を高く肉厚く仕立てる一方で棟をわずかに削いで刃の通り抜けの効果を高めている。区深く残され、手溜りもたっぷりとして激しい打ち合いにも耐えられる構造。鎬地柾目、平地小板目鍛えの地鉄は、杢目を交えて地沸が厚く付き、肥前刀工中でも特異な存在感を明示している。刃文は鎬地にまで達する深い互の目に小互の目、丁子、尖刃、飛焼を配して皆焼調に相州伝の激しい構成で、帽子はおだやかな湾れ込みに掃き掛けを伴う小丸返りで、浅い棟焼に連続している。沸の深く厚い焼刃は匂を伴って明るく、匂いの立ち込めた刃中には太い足、葉、島刃が複雑に入る、これらを切って金線稲妻、砂流し、杢目に沿った渦巻き肌が働く。茎も肉厚く、特徴的細鑚で銘が刻されている(注A)。 黒漆塗藍鮫皮研出鞘の簡素な拵が附されている。
注@…銀座情報一八九号に、天和二年紀の「試割鉄冑」と添銘された刀を掲載。また、福永酔剣先生「肥前の刀と鐔」に詳しい。
注A…同「肥前の刀と鐔」(上)口絵102の刀「肥前住源宗次鍛之試割鉄甲」と銘字が酷似。
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