山水図鍔(鐔)
銘 長州萩住友久作

江戸時代中期 長門国萩

赤銅磨地丸形鋤出彫
縦:79mm強 横:76mm
切羽台厚さ:4mm
耳際厚さ:4mm
特製桐箱入

特別保存刀装具鑑定書
ご成約を賜りました


(注)長州鐔には山水図が多い。その源は室町時代の画聖雪舟にある。周防、長門、筑前、豊前、肥前を領有した守護大名大内氏の庇護により明国で水墨画を学んだ雪舟。帰国後は山口天花の雲谷庵に落ち着き「山水長巻」をはじめとする傑作を描いた。その画風は、西国随一の大名毛利輝元から雪舟流の復興を命じられた原治兵衛直治(後の雲谷等顔)に継承され雲谷派として幕末まで続いた。

 どんな拵えにも合うと人気を博し、長州藩の経済を支える特産品でもあった鐔。そのほとんどが鉄製で鍛えの良い鉄味と艶のある深い錆色が身上だが、稀に本作のような赤銅地による入念作がある。青味を帯びた上質な赤銅磨地に展開するのは奇岩を背景とし、人々の営みを水辺に描いた山水図(注)。鐔としては大振りだが、手のひらに収まる大きさである。その中になんと豊かな世界があることか。作中の人物になってこの世界を探訪してほしい。空間にしっかりとした奥行きが感じられ、特に岸辺の描写が見事である。興味を惹かれるのは櫃穴脇にある奇岩である。大きな空洞があり、そこから湖面に立つ細波が見える。ここまではっきりと大きくはないがこれは雪舟の「山水長巻」にも描かれている。余談だが洞窟や岩に空いた穴、木の洞などが聖なる世界、または異界の入り口であるとする思想や宗教が中国や琉球、果てはケルトにもあったことが想起される。画面のそこここに雪舟の影響がうかがえる。強弱、濃淡、掠れ、滲み。筆によるそれを鏨で表現しようと技の限りを尽くした友久畢生の特別作である。
楼閣山水図鍔(鐔) 銘 長州萩住友久作

楼閣山水図鍔(鐔) 銘 長州萩住友久作

楼閣山水図鍔(鐔) 銘 長州萩住友久作

楼閣山水図鍔(鐔) 銘 長州萩住友久作

楼閣山水図鍔(鐔) 銘 長州萩住友久作

楼閣山水図鍔(鐔) 銘 長州萩住友久作

楼閣山水図鍔(鐔) 銘 長州萩住友久作

楼閣山水図鍔(鐔) 銘 長州萩住友久作

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