菊花図大小鍔(鐔) |
江戸時代後期 武蔵国江戸 |
夜の水鏡のように青みを帯びた黒色を呈する赤銅磨地。金を贅沢に含んだ上質な赤銅地だからこその深い黒である。そこに様々な花型の菊花が色彩を変えた金と銀の平象嵌と色絵で彩られ、競うように咲いている。江戸時代の園芸ブームにより品種改良が進んだ菊は地域により独特の花型に発展し、江戸菊、嵯峨菊、伊勢菊、肥後菊、美濃菊、奥州菊など土地の名を冠して呼ばれていた。本作に描かれた菊もまさにそのような名花であろう。水鏡に映った花のごとく幻想的な光景である。 吉岡照次は徳川幕府の抱工吉岡因幡介家の七代目当主である。武家に相応しい格調高い作を多く残しているが、本作のような平象嵌色絵の作も得意としている。吉岡照次と個銘を刻した本作は特別の需によるものであろう。造り込みは耳際で肉を落とした碁石形、耳には金覆輪を廻らせ実に華やかである。 |
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