猛虎図鍔(鐔) |
江戸時代後期 伊予国 |
豫州正阿弥派の金工は常に何かしらの創意工夫を凝らし、しかも総じて技量が高い。本作は槌目と焼手腐らかしにより例えていうなら茘枝の外皮のような複雑な地模様を見せていて、耳の磨地との対比が面白い。そして何といっても主題の虎である。猛虎というより猫のトラちゃんと言いたいような、不敵な笑みさえ可愛らしく見えてしまう姿。輪郭線を垂直に深く彫り下げ内側を高彫し甲鋤彫と片切彫を併用した縞模様の間を細かな毛彫で流れるような美しい体毛を表している。ぐっと前に出した大きな足、体の後ろでほんの少し見える尻尾。余白を大きくとった全身を見せない構図が、暗がりからのっそりと出てきたような感じを漂わせている。 |
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