平造脇差
銘 國房

Hira-zukuri Wakizashi
Kunifusa



伊予国 元和頃 約四百年前
Iyo province, Genna era, early Edo period (early 17th century), about 400 years ago

刃長 一尺三寸六厘 Edge length; 39.6cm
反り 二分六厘 Sori (Curvature) approx.0.79cm
元幅 一寸一分一厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 3.37cm
重ね 二分四厘 Kasane (Thickness); approx. 0.73cm
彫刻 表 素剣/裏 護摩箸 Engraving: "Su-Ken" on the right face, "Goma-bashi" on the back face
金着二重ハバキ 白鞘入
Gold foil double double Habaki, Shirasaya

平成二十八年京都府登録
特別保存刀剣鑑定書(伊予・年代元和)
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK (Iyo province, Gennna era)

 元和元年に宇和島十万石の領主となった伊達秀宗は独眼竜政宗の長子で、幼少期に豊臣秀吉の寵愛を受けて秀の一字を賜っている。徳川氏を憚って次男忠宗を跡目とした父政宗は、遠い異郷の領主となる秀宗に愛情と資力を注ぎ、優れた家臣を付し、また、腰の物を鍛える刀工として國房を仙台から扈従させたと伝える(注@)。國房は本名を小野小市という。地肌ざんぐりとした大らかな作風は堀川國廣を想起させることから、門人であったとも考えられる(注A)。
 この平造脇差は身幅頗る広く両区深く棟を真に造り、重ね厚くふくらの張った威風堂々の体配。板目に杢目を交えた地鉄は粒立った地沸が厚く付き、地底に太い地景が躍動して地肌ざんぐりとして明るく、素剣と護摩箸の彫刻が映えて荘厳な様相。刃文はゆったりとした湾れに小互の目、箱がかった刃を配し、帽子は浅く乱れ込んで突き上げ、掃き掛けて小丸に返る。刃境には銀砂のような小沸が付いて眩く輝き、焼の谷から零れて足となり、匂で澄んだ刃中を明るく照らす。小肉の付いた角棟の茎は細かな筋違鑢が掛けられて保存優れ、太鑚の二字銘が鮮明。咄嗟の時、片手で抜き放つべく刀に添えて腰に指した作であろう、大坂の陣の余韻の残る時代を生きた刀工の動向を伝える出来優れた一振となっている(注B)。

注@…末光高義氏の論考「郷土の刀工筑後守国房の研究」(『刀剣美術』一二七号)に「元和元年三月宇和島へ入国の際、仙台から召し連れて来た者だともいわれている(中略)ほぼ間違いないものと思われる」と記している。なお、今後の研究を俟ちたい。
注A…『日本刀銘鑑』に「堀川風の作例がある。国徳とも関係か」と注記がある。『國廣大鑑』に國徳の短刀の押形をみるに茎形、銘形は 國房のそれに通じるものがある。
注B…遺作に元和二年二月吉日紀の藤原國房銘の刀(十八回重要)他、本作と同じ二字銘で、出来の似た平造脇差(二十六回重要)がある。

 

平造脇差 銘 國房平造脇差 銘 國房平造脇差 銘 國房 白鞘

平造脇差 銘 國房 切先表平造脇差 銘 國房 ハバキ上表


平造脇差 銘 國房 切先裏平造脇差 銘 國房 刀身区上差裏

平造脇差 銘 國房 ハバキ

國房押形
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