太刀
銘 備州長舩康永
應永三十二年二月日(業物)


Tachi
Bishu Osafune Yasunaga
Oei 32 nen 2 gatsubi
(Wazamono)



備前国 応永 五百九十四年前
Bizen province, Oei 32 (AD1425), early Muromachi period, 594 years ago

刃長 二尺四寸二分五厘 Edge length; 73.5cm
反り 四分五厘 Sori (Curveture); approx.1.37cm
元幅 九分七厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx. 2.94cm
先幅 五分八厘半 Saki-haba (Width at Kissaki); approx. 1.77cm
棟重ね 二分二厘 Kasane (Thickness); approx. 0.67cm
金着二重ハバキ 白鞘入 Gold foil double Habaki / Shirasaya

昭和三十一年秋田県登録
特別保存刀剣鑑定書
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

  応永備前の隠れた名手康永は初代右衛門尉康光の子と伝え、応永二十六年から永享三年までの年紀作が遺されている。ただ、専ら親の協力者として活動していたために康永銘の作は少なく、本作に見るように、遺されている太刀や脇差はいずれも康光に紛れる極上の出来である。
 元来二尺七寸強のこの大太刀は、三寸の磨り上げながら今なお長寸を保ち、元先のバランス良く腰反りの原姿が窺え、さらに先反りがわずかに付いており、南北朝を経て再び鎌倉期の姿に戻って重ねが厚く仕立てられた(注@)、この時代の特徴的な造り込み。杢目を交えた板目鍛えの地鉄は、盛光や康光にみられるような美しく整った応永杢が穏やかな地景によって現れ、微細な地沸と映りが重層的に働く躍動的な肌合い。直刃の刃文は元から先まで崩れることなく焼かれ、帽子も端正に、先の焼を深く残しわずかに掃き掛けを伴って小丸に返る。焼刃は匂口が締まって冴え、小沸が付いた刃境には揺れるような肌目に沿って繊細なほつれが掛かり、金線、喰い違いが濃密に働き、匂の満ちた刃中は澱を留めず清浄感に満ちている。総体の地刃は時代の遡る南北朝期の青江物をみるが如き佇まい。青江を手本に古作に挑んだものであろうか、注文者の知識と願望、それに応えた康永の技量が、共に本作を生み出す因縁となったものであろう(注A)。

注@…茎の重ねが二分六厘強。
注A…鎌倉時代の一文字を見るように焼頭に丸みのある逆丁子が顕著な作がある。『銀座情報』三七七号。

 

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太刀 銘 備州長舩康永 應永三十二年二月日 切先裏太刀 銘 備州長舩康永 應永三十二年二月日 中央裏太刀 銘 備州長舩康永 應永三十二年二月日 刀身区上差裏

太刀 銘 備州長舩康永 應永三十二年二月日 ハバキ

康永押形
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