短刀
銘 應山澤氏需以楓山廟鉄 川井久幸謹作之
巳年八月

Tanto
Yamazawa-shi no motome ni ojite, Momiji-yama byo tetsu wo motte
Kawai Hisayuki tsutsushinde kore wo tsukuru
Mi no toshi 8 gatsu



 武蔵国 安政四年 百五十九年前
Musashi province, Ansei 4, late Edo period (mid 19th century), about 159 years ago

刃長 八寸 Edge length; 24.2cm 
元幅 八分六厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); 2.62cm
棟重ね 二分強
鎬重ね 二分一厘半 Kasane (Thickness); approx. 0.65cm
彫刻 表裏 腰樋・添樋 Engraving; "Koshi-hi, Soe-hi" on the both sides
金色絵二重ハバキ 白鞘入 Gold iroe double Habaki / Shirasaya

昭和二十六年島根県登録
保存刀剣鑑定書 
Hozon certificate by NBTHK

価格 350,000円(消費税込)

 久幸は天明六年幕臣川井鎗次郎久尊の長男として生まれた。遠江を本国とする同家の遠祖は元亀頃に徳川家康に仕え、大番を勤めて五百石の禄を食み、久幸の家は分家で禄八十石。部屋住の修業時代には若い情熱を剣術と学問に注ぐ一方で鍛刀に強い関心を持ち、細川正義の門を叩いた。正義と親しく交わったことで久幸の中で作刀の異才が覚醒、堅固な刀槍を打つに至ったのである(注@)。
 この短刀は、歴代将軍の御霊を祭った楓山廟が安政二年の大地震で破損した際に出た鉄を用い、安政四年丁巳八月に精鍛された鵜ノ首造の大和当麻伝。身幅たっぷりとして両区深く重ね厚く、中程から先の鎬地の肉が大きく削がれ、それぞれの線が立って締まりのある美しい姿。柾目主調に小板目鍛えとされた地鉄は小粒の地沸が均一に付いて堅く締まる。刃文は直刃調に浅い小互の目と湾れを交え、刃縁に小沸が付いて光を柔らかく反射し、刃境には湯走り、喰違い、二重刃、ほつれ、打ちのけが掛かって多彩に変化、匂で冷たく澄んだ刃中には淡い沸筋が流れ、小足が無数に入る。帽子はふくらに沿って小丸に返る。剣先鋭い茎は化粧鑢が掛けられた筋違鑢で丁寧に仕立てられている。幕臣なればこそ得られた貴重な鉄材で鍛造された、得難い一振である(注A)。

注@…遺作に「効古伊能由虎所好形」と銘した万延元申年十二月紀の七十五歳打ちの十文字鎗がある。由虎は宝蔵院流槍術の達人伊能矢柄の子。
注A…『日本刀工辞典』に、「幕府士川井久幸七十二歳正泰依好焚焼救刀加新鋼造之于時安政四丁巳二月家父欲授與予百腰而蔵五十刀 安政乙卯冬地震家潰焼 刀悉焚 歎惜無及 属川井翁作…」の添銘のある安政四年二月の刀がある。これは安政大地震で焼け残った刀に新たに鋼を加えて造ったことを意味する。

短刀 銘 應山澤氏需以楓山廟鉄 川井久幸謹作之 巳年八月短刀 銘 應山澤氏需以楓山廟鉄 川井久幸謹作之 巳年八月短刀 銘 應山澤氏需以楓山廟鉄 川井久幸謹作之 巳年八月 白鞘

短刀 銘 應山澤氏需以楓山廟鉄 川井久幸謹作之 巳年八月 切先表短刀 銘 應山澤氏需以楓山廟鉄 川井久幸謹作之 巳年八月 刀身ハバキ上表


短刀 銘 應山澤氏需以楓山廟鉄 川井久幸謹作之 巳年八月 切先裏短刀 銘 應山澤氏需以楓山廟鉄 川井久幸謹作之 巳年八月 刀身区上差裏

短刀 銘 應山澤氏需以楓山廟鉄 川井久幸謹作之 巳年八月  ハバキ

久幸押形
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