短刀 兼貞(関)
     

Tanto Sig. Kanesada (Seki)
     

美濃国 永正頃 約五百年前

刃長 八寸二分一厘強 反り 三厘
元幅 七分二厘半 重ね 二分三厘
金着二重はばき 白鞘入

平成二十四年石川県登録
特別保存刀剣鑑定書(関)

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Mino province / Eisho era (late Muromachi period) , about 500 years ago

Hacho (Edge length) 24.9
m / Sori (Curveture) approx. 0.1cm
Motohaba (width at Ha-machi) 2.2cm / Kasane (thickenss) 0.7
cm
Gold foil double Habaki, Shirasaya
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK (Seki)


 兼貞は山城国達磨正光の末孫で、濃州関の東に位置する蜂屋に居住した室町中期文明頃の初代に始まることから、蜂屋達磨、蜂屋関の呼称がある。永正頃の兼貞はその三代目で、兼定初代の門人、即ち之定の相弟子とも云う(注@)。遺作に岐阜城主織田秀信(信長孫)の家臣飯沼勘平の二尺四寸三分半の刀(注A)があり、歴戦の武士(つわもの)から寄せられた信頼ぶりを窺わせている。
永正兼貞のこの短刀は、身幅狭めに重ねの厚い鎧通しの造り込み。わずかに反りが付いてふくらやや枯れ、凛として品格のある姿。地鉄は小板目に小杢目、刃寄りに柾を交えて詰み澄み、地景が細かに入って緻密に肌目起ち、厚く付いた小粒の地沸が光を反射し、鮮やかな関映りも立ち現れ、地肌しっとりと潤う。直刃の刃文は浅くゆったりと湾れ、小沸が柔らかく付いて刃縁明るく、所々に小足が入って照度が高い。焼の深い帽子は沸付き、わずかに掃き掛けて小丸に長めに返る。先端がやや細めに仕立てられた茎は、美濃刀特有の細かな檜垣鑢が掛けられ、細鑚で刻された軽妙な銘字も味わい深い。高位の武将が特別に注文した一口であろう。出来が特に優れている(注B)。

注@…『日本刀銘鑑』に「初代和泉守兼定門という」とあり、「和泉守兼貞」と銘した作を載せている。本作の銘字も「兼」の第二・第 三画の鑚が連れて同じ方向へ向かう等、之定のそれに似ている。
注A…「慶長五岐阜城兵飯沼勘平帯刀。池田家傳後勘平子成?請之、賀府奉仕、後年有故求之 菊田道賢」の添銘がある(『刀剣銘字大鑑』)。
注B…『日本刀工辞典』の兼貞の項に「兼元、兼定、兼明に次ぐ良工である」とあり評価は高く、位列も上作である。

短刀 銘 兼貞短刀 銘 兼貞短刀 銘 兼貞 白鞘

短刀 銘 兼貞 切先表短刀 銘 兼貞 ハバキ上表

短刀 銘 兼貞 切先裏短刀 銘 兼貞 ハバキ上裏


短刀 銘 兼貞 ハバキ

兼貞押形
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