菖蒲造脇差 |
慶長から寛永にかけての年紀作(注)が残されている近江守清宣の、薙刀を仕立て直したような菖蒲造の脇差で、江戸初期の時代観を良く映して覇気横溢の感がある。寸を控えて身幅をたっぷりとさせ、鯰の尾のように物打辺りも張らせて頑丈に仕立て、鎬筋を高くする一方で棟の肉を削ぐことにより刃の抜けを考慮した、抜刀、そして打ち合いと截断を突き詰めた構造。良く詰んだ小板目鍛えの地鉄は、全面にうっすらと関映りが立ち、新趣ながら美濃古作の風合いをも残す出来。浅い互の目乱の刃文は焼頭がわずかに尖って自然な高低連続を成し、物打辺りは乱れも穏やかになり、帽子は小丸返り。匂口の締まって明るい焼刃は、刃境に小沸が付き、刃中には小足と共に明るい匂が広がり、戦国の世も遠からぬ慶長ながら、清く澄んだ出来となっている。独特の形状とされた茎に、太鑚の銘が刻されている。近江守清宣は関七流の徳永派の工で、初銘は兼宣、慶長十六年に近江守を受領して清宣と改銘している。技術が大きく進化した江戸時代初期の関を代表する一人である。 注…寛永四年紀の刀が『銀座情報』三〇三号に掲載されている。 |
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