刀
銘　肥前住播磨大掾藤原忠國
(業物)

Katana
Hizen no ju Harima daijo Fujiwara no Tadakuni
(Wazamono)

肥前国　慶安頃　約三百七十年前
Hizen province, Keian era (early Edo period, mid 17th century), about 370 years ago

刃長 二尺三寸六厘 Edge length; 69.9cm
反り 四分六厘 Sori (Curveture); approx.1.4cm
元幅 一寸一厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); 3.07cm
先幅 六分九厘強 Saki-haba (Width at Kissaki); 2.12cm
棟重ね 二分
鎬重ね二分三厘 Kasane (Thickness); 0.72cm
金着二重ハバキ　白鞘入 Gold foil double Habaki / Shirasaya
平成四年東京都登録

特別保存刀剣鑑定書　Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK

　忠國初代は慶長九年生まれで、名を橋本六郎左衛門という。叔父(注�@)に当たる初代忠吉の薫陶を得て頭角を現し、寛永十三年頃に播磨大掾を受領(注�A)し、佐賀藩主鍋島勝茂の子元茂を戴く小城藩工となる。藩主元茂は、柳生宗矩より新陰流の目録を授与され馬術、弓術、砲術、柔術にも長けた勇士。忠國は藩内の尚武の気風に応え、刃味優れた(注�B)雄刀を鍛えた。
慶安頃の作とみられるこの刀は、身幅広く、鎬重ね厚く、棟重ねが控え目とされて刃の通り抜けの良さを感じさせる、中鋒の凛とした造り込み。地鉄は小板目肌が詰み澄み、地景が密に入り、小粒の地沸が厚く付いて肥前特有の小糠肌となる。刃文は焼が高く、互の目に丁子、二つ連れて矢筈形となった互の目、山形の刃を交えて奔放に変化し、刃縁に銀砂のような沸が付いて光を強く反射し、金筋力強く躍動し、焼の谷から零れた沸は足となり、細かな砂流しが掛かり、刃中は細かな沸の粒子が充満して眩く輝く。帽子は焼深く良く沸付き、横手を焼き込んで刃に寄って小丸に返る。中程が張って先細くたなご腹形となる茎にはやや急な筋違鑢が掛けられ、銘字は鑚当たりが強く、磨の字の第一画が菱形となる等、すべてに忠國初代の特色が顕著。覇気に満ち、かつ華やかな仕上がりで出来も優れ、忠國初代の面目躍如の一刀となっている。

注�@…父吉家は忠吉の異母弟である。
注�A…寛永十三年八月吉日紀の播磨大掾忠國の刀がある（『銀座情報』三 〇六号掲載）。
注�B…山野加右衛門の寛文四年両車三ツ胴截断銘入りの刀（第十四回重 要刀剣）のがある。