脇差
銘 水心子正秀(花押)[刻印]
文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之

Wakizashi
Suishinshi Masahide (Kao)(Koku-in)

Bunka 12 nen 8 gatsubi Jomo Kiryu Arai Shigenaga no motome ni ojite kore wo tsukuru

武蔵国 文化 二百三年前 六十六歳作
Musashi province, Bunka era (late Edo period, early 19 century)

刃長 一尺二寸四分四厘 Edge length; 37.7cm
反り 三分六厘 Sori(Curveture); approx. 1.09cm
元幅 一寸五厘 Moto-haba(Width at Ha-machi); approx.3.18cm
先幅 八分二厘 Saki-haba(Width at Kissaki); 2.49cm
棟重ね 二分二厘
鎬重ね 二分一厘 Kasane (Thickness); 0.67cm
金着二重ハバキ 白鞘入
Gold foil double Habaki / Shirasaya
平成二十九年大阪府登録

特別保存刀剣鑑定書 Tokubetsu-hozon certicficate by NBTHK



水心子正秀は、羽州上山に近い置賜郡元中山字諏訪原の出で寛延三年の生まれ。江戸の下原吉英に入門し、安永三年に山形藩秋元家の抱工となり、天明三年には藩中屋敷に鍛冶場を構えた。古名刀の地鉄、刀の神秘とも言い得る焼入れを研究、その考察と実践を『刀剣辨疑』『刀剣実用論』『剣工秘伝志』等の秘伝書として遺しており、造刀理論(注)は刀界に大きな影響を与えることとなった。
この脇差は式正の大小一腰の小刀として精鍛された一振。身幅広く両区深く、腰元から反り高く中鋒に造り込まれ、寸法控え目ながらも量感のある姿。鎬地を細かな柾、平地を小板目肌に錬り鍛えた地鉄は、細かな地景が働いて緻密に肌目起ち、小粒の地沸が付いて美しく初冬の朝の初霜の如し。刃文は、助廣も得意とした焼幅広くゆったりとした湾れ刃。刃縁に深く付いた小沸は純白の小雪を想わせ、刃中にも地鉄の鍛えが島刃状に起ち現れて変化があり、細かな沸の粒子が充満して刃色は透明。帽子は横手を強く焼き込み、良く沸付いて小丸に長く返る。茎の保存状態は完璧で、流れるような鑚使いで刻された銘字が鮮明。上野国の有力武士新居氏の末裔、繁長の特別注文により最上質の鉄材を用いて精鍛された作で、地刃の沸が昂然と輝き、同作脇差中の傑作である。

注…正秀の復古刀理論を継承発展させたのが門人の大慶直胤と細川正義。

脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之 白鞘

脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之 切先表脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之 中央表脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之 刀身ハバキ上表


脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之 切先裏脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之 中央裏脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之 刀身区上差裏


脇差 銘 水心子正秀(花押)[刻印] 文化十二年八月日 應上毛桐生新居繁長需作之 ハバキ

 

正秀押形

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