刃長 七寸五分九厘
反り 六厘
元幅 一寸二分五厘
重ね 一分五厘
彫刻 護摩箸透彫・爪彫
金着二重ハバキ 白鞘入
平成七年岐阜県登録
Hacho (Edge length)23cm
Sori (Curvature) approx. 0.18cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx. 3.79㎝
Kasane (Thickenss) approx. 0.45㎝
Engraving: "Goma-bashi" sukashi with "Tsume"
吉田正明刀匠が特別の需で精鍛した国宝名物庖丁正宗写しの短刀。本歌は日向延岡内藤家に伝来し、明治の元勲井上薫侯爵が所持した一振で、爪付の護摩箸の透し彫が特徴的な作である。
この短刀も本歌と同じく爪付の護摩箸が垂直に彫り抜かれ、幅広の刀身にくっきりと映えて一際目をひく出来。地鉄の鍛えも入念で、板目肌に太い地景が躍動し、光を反射して輝く地沸が美しい。刃文は浅い湾れに互の目を交え、刃縁に厚く付いた沸は「薄雪のかかりたる如くなり」(『日本刀大鑑』)と表現される正宗の焼刃を想起させ、雲海の如き沸を切り裂くように細かな金線、砂流しが無数に掛かり、刃中も沸付いて細かな沸筋が流れ、覇気に満ちている。帽子は物打付近から鋒へ浅く乱れ込み、激しい金線、砂流し、沸筋が鮮やかに現れ、突き上げて小丸に長めに返る。丁寧に仕立てられた茎は製作時そのままの白銀色に輝き、幅広く先剣形となる茎形も本歌と同一。銘字は神妙に刻され、大作に挑む正明師の意気込みを感じさせる。
正明刀匠は昭和二十五年の生まれ。父正明初代に師事し、正宗、兼氏、堀川國廣、清麿等を範に日本刀文化を世界に発信せんと鎚を振るっている。