刃長 二尺三寸一分
反り 五分
元幅 九分四厘
先幅 六分八厘
重ね 二分一厘
金着二重ハバキ 白鞘入
平成二年東京都登録
特別保存刀剣鑑定書
Hacho (Edge length) 70㎝
Sori (Curvature) approx. 1.52㎝
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.2.85㎝
Saki-haba(Width at Kissaki) approx.2.06㎝
Kasane (Thickenss) approx. 0.64㎝
河内大掾正廣初代は肥前國忠吉初代の孫。早くから頭角を現し、元和九年十七才の時に佐賀藩主鍋島勝茂の御前で打つ栄誉に浴し、寛永二年には正廣の匠名と佐賀城下長瀬町の屋敷地を拝領。美しい姿に端正な直刃や覇気ある乱刃の冴えた名品を手掛け、近江大掾忠廣と共に棟梁格として肥前刀を牽引した。因みに河内大掾の受領は寛永十八年七月二十五日(注①)三十五歳、忠廣の近江大掾受領の三日後である。
この刀は、先が鋭く尖った茎形と銘形(注②)が、寛永十八年八月吉日紀の刀と全く同一であることから、受領直後と鑑られる作。身幅重ね充分で、五分に反って中鋒に造り込まれた、寛永頃に特有の洗練味ある好姿。晴れやかな板目鍛えの地鉄は、地景が筋状、杢状に入り、地底から吹き上がったような小粒の地沸でしっとりと潤い、肥前刀らしい小糠肌となる。互の目の刃文は二つ三つと連れ、高低抑揚が付いて奔放に変化し、刃縁に新雪のような沸が降り積もり、焼の谷から刃中に零れて足となり、天空を切り裂く稲妻のような太く長い金線と細かな砂流しが掛かって覇気横溢。焼頭の中に沸凝りのような葉が入って虻の目状となり肥前刀の特色が顕著。帽子は浅く乱れ込んで沸付き、掃き掛けて小丸に返る。河内大掾正廣の個性が見事に発揮された優品となっている。