源氏物語野々宮図鐔
無銘 山崎派
後藤就乗に学んで一家を成した山崎一賀は、後藤家伝統の古典美を手本に清楚で品位の高い、京金工らしい美空間を構築して人気を博した。『源氏物語 賢木』に取材したこの鐔が良い例で、山崎一賀一門の特質が窺える作。
我が子に伴って伊勢に下ろうとする六条御息所を野々宮に訪ねた光源氏が主題。黒木造りの質素で神々しさに包まれた野々宮の鳥居と、華麗ながら寂しさが漂う源氏の車が、粒の揃った漆黒の赤銅魚子地に肉高く精巧に彫り出され、金銀の色絵も琳派の絵画を見るように美しい。