竹造りの呑込式の合口短刀拵。茶人が会席で用いたものであろうか。侘びた風情がある。柄も鞘にも質感豊かな竹肌と節が現れ、鞘口の若葉と呼ばれる白木の部分も、この拵の場合、鞘口と柄口に竹の断面が鮮明に現れている。また柄は水引風に組み合わされた数本の細竹ひごで装われている。収められていた刀身は八寸弱の内反りの短刀で、重ね薄く鋭利で、特殊な造り込み。これを腰に帯びて刀身を抜いてみると、上に来るはずの刃は下になり、素早く抜き放っての攻撃が可能。狭い茶室等での万一の事態への備えであろうか。唯一の金具は三つに割れる大振りで特殊な造りの割笄。真鍮地に唐草と共に刻された家紋は皇室の菊紋と裏紋の桐紋。所持者の身分に興味は尽きない。