波濤図鐔
銘 園部芳英(花押)
園部芳英は後藤家に学んだ田中芳章の門人芳継の子で文化三年の生まれ。後藤流の赤銅魚子地高彫色絵の技法を得意としたが、さらに発展させた瀟洒な風景図を精密に写実描写した数多くの作品を遺している。
この鐔は、上質の赤銅地を安定感のある竪丸形に造り込み、全面に激しく波立つ大海原を彫り描いた、迫力のある作。鐔の上方に渦巻くのは竜巻か、自然の脅威を題材に採りながら、高彫による波の彫口が繊細緻密で、波頭の崩れ落ちる様子に躍動感があり、大小異なる大きさの金の点象嵌が活きている。