秋草図鐔
無銘 美濃
室町時代に隆盛した深彫表現による秋草図で良く知られている美濃彫様式の鐔は、江戸時代に至っても広く好まれており、後には本作のように美観を追求した華麗な空間表現が突き詰められている。
耳に葉を連続させ、耳際から鐔中央へと花や枝を伸ばす構成は清楚で美しく、しかも野の息吹と躍動が感じられる。
この鐔は、下方に花束を意識した構成があり、主題が自然美から生け花などの創造美へと展開されたものであることが理解できる。
上質の赤銅地は色合い黒々とし、伝統的な高彫に厚手の金銀色絵が施されて濃厚な色合いを呈している。全面に散らされた銀の点象嵌は朝陽に輝く露のようにも見え、清浄な空気により植物に生命を与えているようだ。小柄笄の櫃穴には金の内覆輪が施されており、これも華やかさを高めている要素。