宇治川先陣図鐔
銘 落葉美道造
美道は、和漢の古典文学や歴史人物に題を得て写実的に描写する作風を得意とした水戸の金工。
この鐔は、京の木曽義仲攻略を命じられた義経軍の、佐々木高綱と梶原景季による先陣争いの場面。橋板を落とされた宇治川を背景に、高綱と、その横をすり抜けて乗り出した景季を活写している。
耳際が薄手の碁石形に造り込んだ赤銅地を石目地に仕上げ、極肉高に両者を彫り出し、金銀赤銅素銅の色絵を加え、吐息さえ聞こえそうな迫真の場面としている。特に先を行く景季を睨む高綱の目線が鋭い。