銘 陸奥守橘為康
初号康廣
(業物)

Katana
Mutsu no kami Tachibana TAMEYASU
Sho-go: Yasuhiro
(Wazamono)


摂津国 延宝頃 約三百四十五年前

刃長 二尺三寸強
反り 四分一厘
元幅 一寸二厘
先幅 六分七厘
棟重ね 一分八厘半
鎬重ね 二分三厘

金着二重ハバキ 白鞘入
『刀剣美術』五八五号掲載


昭和六十二年東京都登録
特別保存刀剣鑑定書

Settsu province
Enpo era (A.D.1673-1680)
about 345 years ago

Hacho (Edge length) 69.8㎝
Sori (Curvature) approx. 1.24㎝
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx. 3.09㎝
Saki-haba(Width at Kissaki) approx.2.03㎝
Kasane (Thickenss) approx.0.7cm

Gold foil double Habaki / Shirasaya

Put on "Token Bijutsu" (the 585th issue)

Tokubetsu-hozon
certificate by NBTHK

 陸奥守橘為康は富田六郎右(左)衛門と称し土佐将監為康の子で、初代康廣の弟(注①)。初銘を康廣と切り、名跡を継いで為康と改めたことが本作によって知ることができる。一門は紀伊国より大坂に移住したことから、紀州石堂あるいは大坂石堂と尊称され、遠祖一文字に倣った重花風丁子乱刃を得意とした。
 この刀が特徴を顕著に示す作例で、式正の大小揃いとされたものであろう、二尺三寸の刃長に適度に反りが付き、元先の身幅も応じて均衡を保ち、区深く残されていることから大切に伝えられたことが想像される。緻密に詰んだ板目鍛えの地鉄は流れ肌を伴い、鎬地が柾目調に揺れ、総体に地景が強く起って肌目を強調し、焼が深いにもかかわらず、この工の特質でもある乱れ映りが鮮明に観察される。刃文は焼出しから始まる小互の目が次第に焼高くなり、複雑に出入りする小丁子が鬩ぎ合う態を成し、小模様の蛙子風、雁又刃、尖刃、小さな飛焼を複合し、帽子は直となって端正な小丸に返る。匂口鮮明な焼刃は、刃境の肌目に働きかかった淡いほつれが所々稲妻状の金線を成し、匂の起ち込めた刃中には小足、葉、飛足が無数に入って複雑華麗な景色を生み出している。物打辺りの働きが特に活発で、地中の板目に沸匂が感応し、焼頭から地中に煙り込むような映りが起ち、丁子状の黒映りも鮮明。地刃共に古作一文字を彷彿とさせる出来となっている

注①…兄の説もある。陸奥守為康と備中守康廣の合作脇差がある。銀座長州屋旧蔵。

刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣 白鞘

 

刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣 差表切先刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣 差表中央刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣 差表ハバキ上

刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣 差裏切先刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣 差裏ハバキ上刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣 差裏ハバキ上

 

刀 銘 陸奥守橘為康 初号康廣 ハバキ

 

為康押形