平成二十年東京都登録
特別保存刀装鑑定書(拵)
保存刀装鑑定書(刀身)
江戸肥後金具の作者の一人、無等斎安之(やすゆき)の一作揃いの脇差拵。安之は肥後金工に学んで江戸肥後を盛行に導いた熊谷義之の門人。この拵は、鞘を綺麗に線の揃った縦篠刻に仕立て、黒漆塗の下地には微細な銀粉を散し、その微妙な色合いに美観を求めたもので、時を経て銀が黒化し、透明感のある赤味がかった黒漆を渋い色に変じさせている。一作金具は雲の量感を抑揚変化のある地造りとし、金と銀の布目象嵌を施し、さらに鉄地との色合いの調和を追求したもの。直線的な鞘と曲線になる金具が見事な空間を構成している。大粒の鮫皮に古風な目貫が綺麗に巻き込まれている。
刀身は新古境を活躍期とする美濃の兼永。身幅広く鋒延び、棟を削いで鎬高く仕立てた造り込み。鎬地は柾目が強く横手下辺りの一部に鍛え疵が現われ、平地も所々に小疵があるものの杢目を交えた板目鍛肌詰み、関映りが現われて凄みがある。匂口の締まった焼刃は左右に開きごころの互の目に尖り互の目を交え、所々に飛焼を配して輝き強く、刃縁に匂のほつれが淡く入り、匂足も冴え、物打辺りに砂流しが掛かる。帽子は典型的な地蔵に乱れて返る。