竹雀図笄
銘 鶴府城坤之居中川一的
後藤一乗の高弟一的は美作の出で、中川家の十一代目。兄に一匠と勝義がおり、自らは津山松平家に仕えた。
この笄は、竹林に遊ぶ雀の、長閑な時間の流れが感じられる作。朧銀地を細かな石目地に仕上げ、金の平象嵌と繊細な片切彫で雀を描いている。竹林は強弱変化のある得意とした片切彫。雀の鮮やかな金は、木漏れ日に向かって飛び立つ姿を捉えたもの。裏は松若で、いずれも冬に青々とした葉を茂らせる植物。
添銘された「鶴府」は、鶴田藩(注)のことであろう。
注…幕末から明治にかけての美作国の藩。現岡山県津山市桑下に陣屋が設けられた。