東下り図大小鐔
銘 宗壽(花押)
横谷宗壽は米沢の金工(竹林図一作金具の大小拵等が遺されている(注))。平安期、未開の東国を旅するのは冒険であり、多くの歌人は旅人の言葉を通して歌枕を疑似体験していた。ところが在原業平は自らの足で東国を歩いた数少ない歌人。旅路の感動を求める一方、富岳を眺め離れてゆく都を想い浮かべて涙したというこの場面はあまりにも有名。
赤銅地を深く彫り込んで主題である業平を立体的に彫り表し、金銀素銅の色絵を加え、聳え立つ霊峰は高彫銀色絵。清く澄んだ大空は魚子地、波は遠くへ行くほどに細かな描写。日本の古典美が示された貴重な大小揃いである。
注…銀座長州屋旧蔵