四方鐶文菊水図鐔
銘 勝弘斎壽延造
名水、妙薬伝説を源とする菊水は、楠木正成が家紋として用いている。水の流れと菊花の組み合わせは家紋を超越して美しい空間を生み出す。
叢のない微塵に詰んだ鉄地が石目地に仕上げられたこの鐔も、蕨手の組み合わせからなる耳が優しく、水の流れを銀で、菊花は色を違えた金に銀と赤銅で色鮮やかに表現され、繊細な彫口により構成美が際立っている。
東龍斎清壽の高弟壽延は、『金工事典(注①)』では水戸の出、『刀装・刀装具初学教室一〇九(注②)』では雲州広瀬の住人と記している。
注①…若山泡沫著。
注②…福士繁雄著『刀剣美術』 五五八号。広瀬は現島根県安来市。