銘 造大慶直胤(花押)
天保七年仲春

Katana
zou Taikei NAOTANE (Kao)
Tenpo 7 nen Chushun


出羽国‐武蔵国 天保七年
五十八歳 百八十五年前

刃長 二尺二寸八分五厘
反り 六分
元幅 一寸二厘
先幅 六分八厘
棟重ね 二分一厘
鎬重ね 二分一厘半

金着二重ハバキ 白鞘付

黒石目地塗家紋陰蒔絵鞘打刀拵入
拵全長 三尺三寸
柄長 七寸四分

附 藤代義雄鑑定書(最上作)

昭和二十七年北海道登録
特別保存刀剣鑑定書

Taikei NAOTANE
(Born: AD1779, An'ei 8)
Dewa-Musashi province
Forged in Tenpo 7 (AD1836, late Edo period)
185 years ago

Hacho (Edge length) 69.2㎝
Sori (Curvature) approx. 1.82㎝
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx. 3.09㎝
Saki-haba(Width at Kissaki) approx.2.06㎝
Kasane (Thickenss) approx. 0.65㎝

Gold foil double Habaki / Shirasaya

Kuro ishime-ji nuri Kamon makie saya,
uchigatana koshirae
Whole length: approx. 100cm
Hilt length: approx. 22.4cm

Tokubetsu-hozoncertificate by NBTHK
"Saijo-saku (Excellent)"
certificated by Master Fujishiro Yoshio

 直胤(なおたね)は名を荘司箕兵衛といい、安永八年に出羽国山形城下の鍛冶町に生まれた。同郷の先達水心子正秀を頼って江戸に出たのは寛政十年頃で、業成って文化九年に秋元家に抱えられている。下谷御徒町に住み、師正秀の復古刀理念を継承し、さらに工夫を重ね、備前伝においては古備前だけでなく長光、景光、兼光と長舩本流を、相州伝においては正宗、郷、志津兼氏などを突き詰め、新々刀を超越して新時代到来を想わせる幾多の名作を精鍛した名工である。
 抜刀に適した寸法と反り格好に仕立てたこの刀は、研ぎ減りなく元先の身幅もバランスよく、刃区深く遺された健全体躯。刷毛で撫でたように綺麗に揃った柾目鍛えの地鉄は、靭性を高めるべく組み込んだ地景が濃密に働き、濃淡変化に富んだ地沸が同調して湯走り掛かり、これらが光を受けて冴え冴えと輝く。湾れに互の目を交えた刃文は、区下わずかな焼き込みから始まり、刀身中ほどから焼が強まり互の目が不定形に乱れて尖り刃の一分が鎬筋に達するほど。帽子は強い掃き掛けを伴って丸く帰り、物打辺りの棟をわずかに焼き込む。沸の強い焼刃は、銀の砂のような沸が光を強く反射して眩く輝き、地中には柾目肌に同調した二重刃のように層を成す湯走りに加えて角刃のように飛焼が射し、あるいは和紙を引き裂いたように肌目と沸が働き合う。匂の満ちた刃中も同様に肌目と感応した沸が砂流し、沸筋、金筋を生み出し、無数に入る足を切って流れ掛かり、物打辺りには綾杉状に揺れる肌が現れ、ほつれと沸筋を伴う金線が屈曲して走る。化粧鑢の施された筋違鑢が丁寧に掛けられた保存状態の良好な茎には、太鑚の銘字(注)が力強く刻されている。
 黒石目地に四ツ目菱紋を陰蒔絵とした鞘に、桐紋散しの縁頭、巴状に柏葉を透かした赤銅地の鐔を掛けた打刀拵が附されている。

注…『日本刀大鑑新刀篇二』は、天保七年十一月吉日の刻印「シナノ」の刀の銘字について「筆に墨をたっぷりとつけて書いたような鏨太、雄大な銘字に自信があふれている」と評している。

刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春黒石目地塗り家紋陰蒔絵鞘打刀拵 刀身 刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春 白鞘

刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春 差表切先刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春 差表中央刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春 差表ハバキ上

刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春 差裏切先刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春 差裏中央刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春 差裏 ハバキ上刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春 差裏ハバキ上

 

刀 銘 造大慶直胤(花押) 天保七年仲春 ハバキ

直胤押形