楼閣山水図鐔
銘 蟻行子源長美(金象嵌花押)
長美は長常に学んで養子となった一宮家二代目。
この鐔は一幅の掛軸を見るような古典美を求めた上品な作。地金は極上質の赤銅で、量感のある高彫に微細な石目地を施して霞の漂う山間の空気を演出。
特筆すべきは高彫部分に施されている彩色で、水辺の岩などに、仔細に観察しなければ判明できないような微妙に色合いを異にする色金を、師長常も得意とした平象嵌の手法で施している。
銘には金平象嵌で花押を添え、櫃穴にも金の内覆輪を廻らしており、総てにおいて格調が高い。