夜梅図小柄
銘 後藤光美(花押)
いずれの御屋敷であろうか門越しに枝先を覗かせている梅樹。夕暮れ時の冷たい空気に包まれていながら、微かな香りに暫し立ち止まって眺めてしまう。次第に暗く落ちてゆく空に三日月が共演、この自然の舞台は我々の心を掴んで離さない。
光美は後藤宗家十五代で、文化元年に家督を相続している。澄んだ冬空を想わせる細やかに揃った赤銅魚子地を背景に、梅樹が宙を這う龍神の如き枝振りに高彫され、梅花は金銀の色絵。三日月も鮮やかな金色絵で、広くとられた透明感のある空間が月を印象付けている。